晴れた日の空。少し土煙を上げるグラウンド。少し汚れたサッカーボール。
「由隆! ボール、ボール!」
「そこ、ノーマークだぞ!」
フィールドを激しく左右に行きかうボールがタッチラインを割る。
「透! 早くしろ!」
「分かった!」
ラインを割ってもボールは勢いよく転がっていく。なかなか追いつけないまま、ようやくボールが止まったのは、ある少年の足元。少年はそのボールを拾い上げる。
「あっ、サンキュー」
ボールを追いかけていた少年が、目線を地面から上に上げる。
そこにいたのは身長は自分と同じぐらい、ルックスは――まあまあいい方じゃないか?そして自分と同じ年頃の少年だった。
「お前、見ない顔だな?」
「えっ…?」
「何処から来たんだ?」
「――明日からここの学校に転校して来るんだ」
「へぇー。珍しいなあ。あ、お前3年だろ?オレは1組の深谷透」
「オレは松本…、松本明だ。これからもよろしくな」
そう言って明は少し微笑んで、ボールを差し出した。
「こちらこそ」
透も微笑み返した。
「おーい! 何やってんだ、透!?」
フィールドから仲間の声が聞こえる。
「あっ、ヤバッ…。じゃあ、また明日な!」
「ああ――」
そして透は戻っていった。
ある晴れた日の空。とあるグラウンド。1つのサッカーボール。
ごくありふれた青春の1コマ。しかし全ては過去形になってしまう。
何故なら――
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