0.5 門前払い


駿介たちが修学旅行で銚子に泊まっていた、その日の夜。
ここは千葉市内の病院。その一室に、寂しそうに月を見ている少女が居た。
伊藤輝美(女子1番)。園生緑地中3年4組のメンバーの1人だ。
輝美は、学級委員長の寺田潤子(女子11番)を中心とした、いわゆる『女子中間派』の一人で、明るい性格で、仲間内から人気があった。
そんな輝美も、本当はみんなと修学旅行に行ける、はずだったのだが、出発前日に交通事故にあい、全治1ヶ月。とにかく今は絶対安静状態だった。
はあ〜、退屈だなー…。
やっぱり、ママチャリで下り坂を全速力で走るんじゃなかったー…。
今ごろ、みんなで枕投げとかしてんじゃないのかなー…。
輝美の口からは、ため息しか出なかった。

ふと時計を見てみると深夜1時。もういいかげん寝ようかと思った、その時。
ガチャ、という音がした。急いでドアの方見てみると、見たことも無い、全身黒ずくめの男がそこに立っていた。
びっくりして何も言えない輝美をよそに、男はしゃべり始めた。
「残念だったな…」
「え?」
輝美には何が何だかわからなかった。
「お前はリタイヤだ」
「え?それって、ちょっと…」
そこまで言った輝美だが、次の言葉が出なかった。
目の前に居る男が、銀色のものを出した。それはまぎれもなく、ピストルだった。
男は輝美が脅える間も与えず、その引き金を引いた。
一瞬何かが光った。輝美はその時はそんなことしか感じなかったが、次第に左胸に痛みを感じた。
恐る恐る手を左胸に当ててみると、何か液体が出ている感じがした。
そしてその手を見てみると、月明かりに照らされて赤い液体がついていた。
血…?
そう認識した時、輝美の意識は急激になくなった。

ウソでしょ…?
何でこんな所で?なんで――?
そして輝美は、力尽きた。

輝美が倒れた瞬間、病室に軍服姿の男達が入ってきた。
黒ずくめの男が病室の電気を点けてみると、ベットの上は一面赤く染まっていた。
兵士達が手早く、輝美の亡骸を寝袋に入れ、その場をせかせかと出て行った後、黒ずくめの男は何かを感じているようにその場に立ち尽くしていた。
そして、
「むなしいものだ。仲間とも会えずに死ぬとはな…」
かすかに笑いながらそう言うと、男は静かに病室を後にした。



【女子1番 伊藤輝美 死亡 残り39人】


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