確かに、この世の中は不条理だ。
確かに、納得のいかない事もある。
確かに、毎日のように罪が無い人々が死んでいくのも知っている。
でも私たちは、それでも生きていけた。それはそれなりに。
それなのに…
午前0時の放送を聞いた直後、大越祐美(女子4番)はがっくりと肩を落とした。
潤子も死んだ――
先ほどから、祐美の頭の中は、その言葉ばかりが横行していた。
私は…、助けられたはずなのに…。
彩から逃げてきた祐美は、がむしゃらに走り、十字路の側にあったミニ公園のベンチで休憩していた途中だった。
その時知った。寺田潤子が死んだことを。
どうして――?
祐美は立ち上がって、ふらふらと歩き出した。
どうして潤子は、私なんか助けたの?
潤子は頭もいいし、運動だって出来る。みんなの人気者で信頼も厚い。私なんか、その恩恵に与っているだけの存在なのに――
なんで、私に戦わせないで死んでいったの? ワタシナンカ、タスケラレルカチナンテナイノニ――?
しばらくして、祐美の目の前に建物が見えてきた。
その建物は、月明かりで見る限り全体が白く塗られ、形も螺旋状に上に伸びていて天にも届きそうだった。
あれは何? ――もしかしたら、天国まで続いているかも…
祐美はその建物に近づいていった。
潤子。潤子、なんで? 何で私なんか助けたの? 私の命の何処に価値があるの? ねえ、教えてよ。教えて、潤子――
その建物は段々近くなっていく。ついに、壁に手が触れられるとこまで来た。
「なあ。この建物って、何でこんな形になってるんだ?」
一方、ここは建物の中。軍服を着た兵士が、もう一人の兵士に聞く。
「ああ」
もう一人の兵士は、書類片手に話し始める。
「ここは元々テーマパークにする予定だったんだ。その際、ここの設立者がシンボルとして立てたのが、これなんだ。何でも、天に届くようにって、建物全体が螺旋状になっているんだ」
話を聞いていた兵士は、ふーんと頷いた。
「ろくな趣味じゃねえな」
「全くだな」
2人の兵士が話をしている横で、生徒の現在位置を示すモニターから、女子4番を示す表示が、消えた。
消えた場所は、真っ先に禁止エリアになった、管理事務所の側だった。
Which do you hope , dead or alive ?
―― I don't know.
【女子4番・大越祐美 死亡】
【残り30人】
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