「な、何コレ――?」 望と景太の頭上で、梅田昭代(女子3番)は先程から震えていた。 昭代のいる場所は崖になっていて、その上から下での一部始終を見ていた。 あっという間の出来事だった。 池田くんと吉崎くんが話している間に、久納くんと中村くんが出てきて、それで二人とも撃たれて―― 昭代の思考は混乱していた。 小柄な体は地べたに寝そべりながら、顔だけ崖から乗り出して一部始終を見ていたが、その顔はひどく引きつっている。 人の死体を見たのは、これで初めてではないが、やっぱり慣れるものではない。 ――怖い。怖いよ――。やだよ。輝美や久納くんみたいになりたくない――。 ああ、そういえば、輝美も死んじゃったんだね。 修学旅行が終わチたあとに、借りてたCD返すつもりだったけど、返せなくてごめん――。 ああ、何言ってるんだ!私は! 昭代の脳裏に、今まで一緒にいた『友達』の姿が浮かび上がってきた。 一緒にいると楽しかった輝美、輝美と一緒で明るかった潤子、いつもぼんやりしてた葉月、バレーの話になると止まらなかった佐知子―― みんな死んじゃうような人たちじゃなかったのに――。 何で死んじゃったの? 何処で死んだの? 本当に、この世にはいないの――? ねえ、ウソだよね? ウソだって言ってよ――! 一方、下では景太が荷物を漁り、何処かへと立ち去っていこうとしていた。 その時、昭代の目は動く何かを捉えた。 離れた反対側の崖だったので、すぐには判らなかったが、その子供っぽい顔立ちから、青木裕(男子1番)である事が分かった。 いつも、服部竜司(男子14番)と一緒にいる、気が弱くて、影の薄い人―― そんな裕の事だから、目の前の惨劇に足がすくんでしまったのだろう。
昭代は考えた。
「また一人、殺しちまったか――」 望と景太が去った後、裕は下へと降りていった。昭代の死体には気づかずに――
【残り27人】
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